大判例

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最高裁判所第二小法廷 平成5年(行ツ)158号 判決

上告人

大城眞順

右訴訟代理人弁護士

宮良長辰

宮良晧

比嘉正幸

冝保安浩

宮城嗣宏

宮里啓和

与世田兼稔

大城浩

新垣剛

被上告人

沖縄県選挙管理委員会

右代表者委員長

川崎正剛

右指定代理人

吉田宏彦

右補助参加人

島袋宗康

右訴訟代理人弁護士

前田武行

本永寛昭

金城睦

照屋寛徳

阿波根昌秀

仲山忠克

池宮城紀夫

永吉盛元

島袋勝也

芳澤弘明

伊志嶺善三

新垣勉

三宅俊司

藤井幹雄

加藤裕

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人宮良長辰、同宮良晧、同比嘉正幸、同冝保安浩、同宮城嗣宏、同宮里啓和、同与世田兼稔、同大城浩、同新垣剛の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係によれば、本件問題票には、本件選挙の候補者である被上告補助参加人の氏名のほか、本件選挙当時、被上告補助参加人を推薦していた日本社会党若しくは日本共産党又は被上告補助参加人を支持していた公明党の各政党名が記入されていたというのである。公職の候補者の氏名のほか、当該候補者を推薦又は支持する政党名を記入した投票は、公職選挙法六八条一項五号ただし書にいう「身分の類を記入した」投票に当たるものと解するのが相当であるから、右事実関係の下において、本件問題票は、同号ただし書により無効とはされず、被上告補助参加人に対する有効な投票というべきであるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原判決の結論に影響しない事項についての違法を主張するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官中島敏次郎 裁判官木崎良平 裁判官大西勝也)

上告代理人宮良長辰、同宮良晧、同比嘉正幸、同冝保安浩、同宮城嗣宏、同宮里啓和、同与世田兼稔、同大城浩、同新垣剛の上告理由

第一 原判決には、公職選挙法(以下単に法という)の六八条一項五号の「身分」につき、解釈を誤った違法があり、かつ、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、当然破棄されるべきである。以下その理由を述べる。

一 法六八条一項五号本文によれば、公職の候補者の氏名のほか、他事を記載した投票は無効であるが、例外的に、同号のただし書きにより、(候補者の)職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、無効でないとされる。

ところで、本件において、上告人が無効と主張して問題にしている票(以下本件問題票という)は、すべて補助参加人の氏名のほかに、「社会」・「社会党」、「共産」・「共産党」又は「公明」・「公明党」との、補助参加人の所属する政党以外の政党名が記載された票であるが(補助参加人の所属政党名は沖縄社会大衆党であるが、社大党と略称される。)、原判決は、右の如き他事記載のある本件問題票を、全く検証(検票)もせず、従って、票を見る事すらせず、一律にすべて有効と解釈判示した。

二 原判決が本件問題票をすべて一律有効と解釈した理由は、原判決の理由中の、第二の二項2の(一)以降に記載のとおりであるが、多少長くなる事を承知ですべて引用することとする。

(一) 補助参加人は、平成元年から社大党の代表者である委員長の地位にあるが、本件選挙においては、日本社会党及び日本共産党との選挙共闘を実現するため、社大党の公認候補としては立候補しなかったこと、

(二) 補助参加人は、平成四年四月二二日、社大党、日本社会党及び日本共産党の三政党との間で、本件選挙についての共闘態勢を確立することを目的として「第一六回参議院選挙革新合同選対会議(略称「革新合同選対会議」)の設置に関する協定」(丙二)を締結し、これに基づき、同年六月二五日、革新合同選対会議が結成されたこと、

(三) 社大党は、同年四月二二日、公明党との間で、本件選挙において公明党は補助参加人を「支持」し、本件選挙と同日に行われた参議院比例代表選挙において社大党は公明党を「支持」する旨の「協定合意書」(丙三)を取り交わしてその旨の協定を締結したこと、

(四) 補助参加人は、本件選挙において、革新合同選対会議の候補者として立候補し(この事実は当事者間に争いがない。)、社大党、日本社会党及び日本共産党の推薦、公明党の支持によるいわゆる革新統一候補として選挙運動を行ったこと、

(五) 右(一)ないし(四)の事実は、地元新聞である沖縄タイムス及び琉球新報にたびたび報道され、県民に広く知られていたこと、

(六) 革新合同選対会議は、その規約によれば、右三政党、沖縄県労協センター、沖縄県教職員組合、沖縄県高等学校障害児学校教職員組合、沖縄県労働組合総連合の各労働団体と右三政党が一致する若干名の個人で構成され、組織運営は構成団体間の平等・相互尊重の下、全会一致を原則としていたこと、

(七) 革新合同選対会議は、同年七月一日、被告に政治資金規制法六条一項に基づく政治団体設立届けをし、さらに、同月八日、法二〇一条の四第二項に基づき、被告から同条一項の規定の適用を受ける推薦団体であることの確認を受けたこと、

以上の事実が認められ、これらの事実によれば、本件問題票は、日本社会党及び日本共産党が補助参加人の推薦団体を構成し、補助参加人を推薦している旨が報道され、公明党が社大党との間で補助参加人を支持する旨の協定を結び、補助参加人を支持している旨が報道されていたことから、投票者が補助参加人を推薦あるいは支持している政党の政党名を記載したか、又は、これらの政党を補助参加人の所属政党と誤認してその政党名を記載したものと推認するのが相当である。そして、右認定の本件選挙における補助参加人と右三政党との関係に照らしてみると、投票者が補助参加人を推薦あるいは支持する政党の政党名を記載したのであれば、補助参加人の所属政党に準ずる政党名を記載したものというべきであるし、右三政党を補助参加人の所属政党と誤認して記載したとしても、補助参加人の所属政党が社大党であることを知りながら故意にそれ以外の政党名を記載したものということはできない。

そうすると、いずれにしても本件問題票における「社会」・「社会党」、「共産」・「共産党」又は「公明」・「公明党」との記載は、法六八条一項五号にいう「身分」の類の記載であって有意の他事記載とは認めがたく、氏名とともにこれらの記載のされた本件問題票はいずれも有効投票というべきである。

三1 しかしながら原判決の、共産党、社会党が補助参加人を推薦していたこと、公明党が補助参加人を支持していたという事実が新聞報道等で県民に広く知られていたから、推薦政党及び支持政党は、補助参加人の所属政党に準じた政党名の記載となり、法六八条一項五号にいう「身分」の類と解釈すべきだとの解釈は、あまりにも我々の常識とかけ離れた解釈であり、かかる解釈の拡大は、もはや解釈の枠を超えたものとして明白に誤っていると言わざるを得ない。

2 即ち、まず、「身分」という用語の意義であるが、広辞林によれば、「①社会的地位、分際、②法律上における一定の地位」など本人の属性を示す用語であるから、本件にあっては、本件争点となっている他政党名が補助参加人の「社会的地位」及至は「法律上の一定の地位」と解することが可能か否かということに尽きる。

ところで、「推薦」とは、本件にあっては、補助参加人の所属政党以外の政党である「共産党」、「社会党」が党議に基づき、「他政党所属」の候補者を「より良い人物として薦める」ことに外ならないから、推薦政党が補助参加人の身分の類となるはずがない。また、「支持」とは、公明党が自己の所属政党以外の候補者であることが明らかな補助参加人の「主義、意見、政策などに賛成して、これを援助する」ことに外ならないから、支持政党が補助参加人の「身分」の類と解する余地は全くない。そして、これらの推薦や支持が如何に広く報道され周知されていようとも、元々身分でないものが身分となる筈はないから、その結論にかわりはない。

3 原判決の前記判示理論は、「推薦」及至は「支持」があれば、政党のみではなく、あらゆる団体も当該補助参加人の身分の類と解さざるを得ない結果となるから、「身分」の類が無限定に拡大解釈されることになり、極めて不当な解釈結果を導くこととなる。

たとえば、原判決の判示理論を貫くと、補助参加人を推薦し、補助参加人の選挙母体を構成する三政党以外の沖縄県労協センター、沖縄県教職員組合、沖縄県高等学校障害児学校教職員組合、沖縄県労働組合総連合等の、各労働団体名を併記した票も、「投票者が、その併記された労働組合が推薦する補助参加人名」を記載した票であるから、その労働組合員も補助参加人の身分に類するものとして有効と扱わざるを得ないことになる。しかしながら、労働団体名は、補助参加人の「身分」の類になるかと問えば、その答えは当然「否」のはずである。候補者と全く関係ない労働団体名の記載が「身分」の類と解することは不可能だからである。

本選挙の実例の中にも、那覇市や伊良部町の開票区のように、本件問題票と同様の記載のある票を全部無効と判定した選挙管理委員会もあるし、事実上検票した五開票区の無効票の中に、原告及び補助参加人の氏名の他に左記党名が記載されている為に無効とされた票も存在する。

①原告票 一三票

公明党 八票

社会党 一票

民社党 一票

日本新党 一票

風の会 一票

税金党 一票

②補助参加人 六票

二院クラブ 一票

風の会 二票

民社 二票

日本新党 一票

もし、原判決の論理に従うならば、これらの票もすべて有効とせざるを得ないであろう。

しかるに、前記各票の所在する開票区において無効票として処理されているのは、当該候補者と無関係なことが明白な政党名の記載についてまでも、「候補者を推薦又は支持する政党の政党名を記載した」と解すること、その場合に、その政党も候補者の身分に該当すると解することが「身分の類」の意義の合理的な解釈基準とは到底なり難いとの、我々の主張を裏付けるものである。上告人代理人らが、諸文献等を渉猟して調査した限り、「推薦」や「支持」を受けたとの一事から当該候補者が「推薦」及至は「支持」する政党、その他の団体の身分を取得したと解すべきであるという解釈は存在しないから、原判決は伝統的な法解釈に違背しているという意味でもまた破棄されるべきが当然と思料する。

四 公職の選挙の投票において、どの範囲の他事記載までを有効と認めるかは立法政策の問題であり、司法が判断決定するところではない。たとえば、法六八条一項五号但書に列挙する「職業、身分、住所又は敬称」のほかにも、投票の秘密を害する恐れのない他事はいくらでも考えられる。しかるに、単に投票の秘密を害する恐れがあるかどうかという観点のみから、法の解釈を越えて、前記列挙以外の他事記載の投票の有効性を判断することは、司法自体が法を創設する事に等しく、これは誤りといわなければならない。即ち、同法一項五号但書に列挙以外の他事記載ではあるが、投票の秘密を疑わしめる恐れのない票があった場合に、仮に裁判所がそれを投票の秘密を害する恐れがないと判断しても、それを有効とするためには法の改正を待つべきであり、法の改正を待つまでもなく裁判所が法六八条一項五号の文言の解釈の範囲を超えて、有効と判断することは、それはまさしく解釈ではなく、立法と言わざるを得ない。「社会」・「社会党」、「共産」・「共産党」又は「公明」・「公明党」を補助参加人の「身分」の類と解する事は、正に原審裁判所による実質的な立法と評価せざるを得ない。

第二 原判決には、法六八条一項五号の他事記載の票の有効性の解釈にあたって、「有意の他事記載」の意義の解釈を誤った違法があり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、当然破棄されるべきである。

一 原判決は、本件問題票における「社会」・「社会党」、「共産」・「共産党」又は「公明」・「公明党」との記載について、

「本件問題票は日本社会党及び日本共産党が補助参加人の推薦団体を構成し、補助参加人を推薦している旨が報道され、公明党が社大党との間で補助参加人を支持する旨の協定を結び、補助参加人を支持している旨が報道されていたことから、投票者が、補助参加人を推薦あるいは支持している政党名を記載したか、又は、これらの政党を補助参加人の所属政党と誤認してその政党名を記載したものと推認するのが相当である。そして、右認定の本件選挙における補助参加人と右三政党との関係に照らしてみると、投票者が補助参加人を推薦あるいは支持する政党の政党名を記載したのであれば、補助参加人の所属政党に準ずる政党名を記載したものというべきであるし、右三政党を補助参加人の所属政党と誤認して記載したとしても、補助参加人の所属政党が社大党であることを知りながら故意にそれ以外の政党名を記載したものということはできない。

そうすると、いずれにしても本件問題票における『社会』・『社会党』、『共産』・『共産党』又は『公明』・『公明党』との記載は、法六八条一項五号にいう『身分』の類の記載であって有意の他事記載とは認めがたく、氏名とともにこれらの記載のされた本件問題票はいずれも有効投票というべきである。」

と判示する(原判決の理由中の第二の二項の2の後段)。

二 しかし、本件問題票の「社会」・「社会党」、「共産」・「共産党」又は「公明」・「公明党」との記載を、補助参加人の「身分」に該当すると解釈すべきでないことは前記第一の原判決の「身分」の意義の解釈に関する誤りの部分で論じたとおりである。

即ち、右の如き記載が補助参加人の「身分」に該当しない事は明らかであるから、右記載をもって「身分」の類の記載であって有意の他事記載とは認めがたいとの原判決の判示は、始めからその前提において、誤っていると言わなければならない。

三1 また、原判決は、本件問題票について、「投票者が補助参加人を推薦あるいは支持している政党名を記載した…中略…と推認するのが相当である」旨判示する。

右は、原判決自ら、本件問題票の政党名の記載が有意の他事記載である事を認めているものである。即ち、

投票者が、補助参加人を推薦あるいは支持している政党名を記載した、というのであれば、その論理的帰結として、投票者は、自分が投票用紙に記載した政党名が、補助参加人の所属する政党ではなく、補助参加人を推薦又は支持する政党の政党名であることを承知の上で記載したということになる。右の場合は、原判決がその理由の第二、二1(一)の末尾の部分で正当に指摘するように、投票者が事実の相違を知りつつ故意に誤った政党名を記載したときに該当するのであるから、有意の他事記載に当たると解するのが相当であり、当然無効と解されるべきなのである。

しかるに、原判決が前記推認をしておきながら、これを有効と解するのは背理である。

2 また、原判決の、本件問題票は「投票者が…中略…これらの政党を補助参加人の所属政党と誤認して、その政党名を記載したものと推認するのが相当」との判示も、以下に述べる理由のとおり、その論理に全く合理性がないと言わざるを得ない。

原判決は、上告人主張事実、即ち、補助参加人が社大党の委員長という党籍を有する人物であって、同人がその党籍を有したままで革新合同選対会議の候補者として立候補し、その立候補の経過が県内の琉球新報、沖縄タイムスの新聞記事等を通じて県民各位に周知されていたとの主張に対し、「補助参加人が本件選挙に立候補するに至る過程、さらには本件選挙の執行までの期間において、補助参加人が社大党の委員長である旨の記載を含む新聞報道がしばしばなされていたことは認められるが、補助参加人の所属政党が社大党であることが県民のすべてに周知されていたとまでは認めがたく、原告の右主張はその前提を欠き失当というべき」と判示する一方で、「投票者が補助参加人の所属する政党名を誤って記載したと推認するのが相当」との結論を導き出すために、「補助参加人は、社大党、日本社会党及び日本共産党の三党との間で、本件選挙についての共闘態勢を確立することを目的として協定を締結し、これに基づき、革新合同選対会議が結成されたことや、社大党と公明党との間で、本件選挙において公明党は補助参加人を『支持』し、本件選挙と同日に行われた参議院比例代表選挙において社大党は公明党を『支持』する旨の『協定合意書』を取り交わしたこと、補助参加人は、本件選挙において、革新合同選対会議の候補者として立候補し、社大党、日本社会党及び日本共産党の推薦、公明党の支持によるいわゆる革新統一候補として選挙運動を行ったこと、等の事実が地元新聞である沖縄タイムス及び琉球新報にたびたび報道され、県民に広く知られていた」と判示する。即ち、補助参加人を推薦し、支持している旨が広く報道されていたから政党名を誤ったと断ずるのである。

3 しかし、上告人主張事実に関しては、詳細な新聞報道の記事等が存するにも拘わらず、県民のすべてに周知されていたとまでは認めがたい旨判示しながら、他方補助参加人に対する社会党や共産党の推薦、公明党の支持に関しては、同じような報道でありながら、何故「県民に広く知られていた」と認定できるのであろうか。また、「広く知られていた」というのは、「周知」より認識のレベルとしては劣る筈であるのに、何故周知でないという理由のみで、原告の主張を排折し、「投票者が、補助参加人を推薦あるいは支持している政党の政党名を記載したか、又はこれらの政党を補助参加人の所属政党と誤認してその政党名を記載した、と推認するのが相当」という判断ができるのであろうか。原判決の右認定は、上告人の主張を排折し、原審裁判所の判断を導く為だけの、証拠に基づかない、主観的な一方的論理と言わざるを得ない。

4 若し原判決の、論理に従うのであれば、上告人主張事実の、「補助参加人が社大党の委員長であり、かつ、社大党の党籍を有したまま」で立候補した事実自体も、原判決引用の新聞記事によって、「県民に広く知られていた」と推認することができる筈である。むしろ、沖縄県においては公知ともいうべき、社大党が沖縄県土着の政党として結党された特殊事情及び、同党が沖縄県における地方政治のレベルでは自由民主党より歴史が長く、かつ、同党に次ぐ有力政党である事実等を加味して判断すれば、補助参加人の所属政党である「社大党」以外の党名の記載は、投票者が故意に同人の所属政党以外の政党名を記載したものであり、有意の他事記載として無効と解すべきであるとの認定が、より強く推認される、というのが、当然の結論というべきである。

従って、既に論じたとおり、原判決の前記判示は、まさに上告人主張を排斥することのみを目的とした論理であり、判決論理としての科学性、合理性を欠如した極めて不当な判示というべきである。

5 原判決の判示の誤りや不合理性、その認定が必ずしも証拠に基づくものとは解し得ないことを明白にするために、証拠として提出された新聞記事をもとに「公明党シマブクロ」と記載のある票を例にとって検討してみる。

原判決は、理由第二の二、2(三)において、「社大党は、同年四月二二日公明党との間で本件選挙において公明党は補助参加人を『支持』し、本件選挙と同日に行われる参議院比例代表選挙において社大党は公明党を『支持』する旨の『協定合意書』を取り交わしてその旨の協定を締結したこと」と認定し、続いて同(五)において、「右(一)ないし(四)の事実は地元新聞である沖縄タイムス及び琉球新報にたびたび報道され県民に広く知られていた」旨判示する。

ところが、原判決が判示引用する丙第三号証は、社大党と公明党との間のいわゆる選挙協力に関する取引文書であって、まさに公党間の秘密文書と解すべきものであり、同文書が新聞等に掲載された事もなければ、その内容が報道されたこともなく、従って同合意内容が「県民に広く知られていた」との認定は不可能である。

即ち、本件記録に存する公明党関連の記事は、

① 甲第一号証の二五「社大党は公明党県本部との間でも協力要請の協議を進めており、支持を取り付ける見通し」

② 甲第二二号証の一三「公明党県本部の白保台一本部長は、――社大党委員長・島袋宗康氏を支持する方針を明らかにした」、

③ 丙第六号証の一の一「席上、出馬表明に先立ち島袋氏と社大、社会、共産の三党が革新統一基本政策、革新合同選対会議の設置に関する協定を締結。さらに公明党とも選挙協力の確認が交わされたことも報道された」、

④ 丙第六号証の一の三、「島袋宗康候補=社大、社会、共産推薦、公明支持」

との記載程度しか見い出せず、丙第三号証の記載内容の事実が「県民に広く知られていた」旨認定できる程に報道されていた事実はない。従って、右認定は、まさに証拠に基づかない認定と断ずる外ないものである。

要するに、公明党に関連する記事は、記事の扱いとしても一、二行で、その内容も「支持した」という程度のものでしかないから、補助参加人と公明党との関係は選挙に関心のある人物を除いては、むしろ全く知られていなかったと認定するのが最も自然なのである。

6 ところで、補助参加人の「公明党シマブクロ」等記載票に関する主張は、「投票者において公明党の支持する候補者である旨を明らかにするために記載した」か、又は「補助参加人の所属政党を公明党と誤認したか」のいずれかであるというものであるが、前者の主張の通りとすれば、その票は当然無効票と解されるべきであることは、既に述べたので、ここでは、後者について論ずることとする。原判決判示の通り、補助参加人が立候補するまでの一連の経緯が報道され、この事実が「県民に広く知られていた」との認定が正当であれば、補助参加人が社大党の委員長であるという事実も同様に広く県民に知られている筈であるから、投票者が「補助参加人の所属政党名を公明党である」と誤認したと推認することは経験則に反した認定と断ずる外ない。加えて、前記の通り、社大党は昭和二五年一〇月三一日に結党された、沖縄県における戦後最古の土着政党であって、しかも、かつては県知事を始めとして、多数の県議・市町村長・市町村会議員を輩出し、現在も沖縄県における地方政治の分野においては、自由民主党の次に位置する大勢力である。公明党と社大党との区別は、いわば県民一般の常識的知識に属しているから、補助参加人の所属政党が公明党であると誤認するはずがなく、右認定の誤りは明白である。しかるに、原判決は、公明党との記載ある票についても「社会党」「共産党」との記載ある票と故意にまとめて、「本件問題票は、日本社会党、及び日本共産党が補助参加人の推薦団体を構成し、補助参加人を推薦している旨が報道され、公明党が社大党との間で補助参加人を支持する旨の協定を結び、補助参加人を支持している旨が報道されていたことから、投票者が補助参加人を推薦あるいは支持している政党の政党名を記載したか、又は、これらの政党を補助参加人の所属政党と誤認してその政党名を記載したものと推認するのが相当である」旨判示するのである。

しかし、既に再三述べたとおり、沖縄県においては、社大党の方が公明党よりも歴史が古く、勢力も強いのであって、社大党の委員長を公明党の党員と誤ったと推認することは、およそ考え難いことである。

四1  原判決は、上告人の、本件問題票の他政党名の記載は、明らかに日本社会党、日本共産党及び公明党の組織的な指示に基づいて故意に記載されたものと推認すべきであるとの主張に対し、「本件問題票が原告の主張通り八〇〇票以上あったとしても、それは、補助参加人有効得票数のわずか0.3パーセント程度にすぎないのであって、右主張のごとき指示の存在を推認するに足る多数の他事記載票が存在するということはできないし、他に右指示の存在を認めるに足りる証拠は全くない」と判示する。

2 しかし、ここで問題とすべき按分率は、有効得票数との関連ではなく、むしろ、本件選挙において存在するとされた無効票のうち、他事記載票とされた票との対比で比率を検討すべきである。けだし、本来全投票の九九%以上が他事記載等の問題のない有効票なのであるから、有効票との比率で考えるならば、如何なる無効票もその投票傾向が薄められてしまって、その特殊性が不明となってしまうからである。そこで、本件について、補助参加人一九九二年一一月二〇日付準備書面添付別表「第一六回参議院沖縄選挙区無効投票の内訳」をもとに検討すると、同表の他事記載票欄によれば、県全体で合計七七九票とされている。これに、有効票中に含まれていると考えられる上告人主張の約八〇〇票の問題票を加算して、百分率で表示すると、約一五七九票(内訳七七九票+八〇〇票=未発見票)の他事記載票のうち、九七九票、(九七九票のうち一七九票は那覇市の開票区において無効票と扱われていた本件問題票と同様の記載のある票である)、実に六二パーセントが本件問題票ということであって、この事実は、特定の指示なしにかかる高率、かつ、類似の記載方法で統一された他事記載票が存在するはずがないことを考えるならば、上告人らの右主張が正しいことを極めて強く推認させるものである。

3 改めて論ずるまでもなく、開票手続きは、短時間に大量、かつ、正確に処理せねばならず、他事記載であるか否かの基準は、開票担当者にとって明確かつ単純なものでなければならない。しかるに、現判決の判示理論によれば、当該具体的な選挙において、選挙民に周知されていた他政党名であったか否か、当該候補者の政党名に準じた身分の類と解する余地があるか否かという、実に困難な、しかも報道状況等によって結論が変わり得る解釈判断を迫るということになるのであって、明白に法六八条一項五号の解釈のみならず、同法により有効票と無効票を明確にかつ簡明に判定しようとした意図に反することとなり、かつ現実の開票処理手続きにも困難をもたらすことになろう。

五1 原審においては、上告人の再三の検証の申立にかかわらず、原審裁判所は検証(検票)を行わなかった。その理由は、既に述べたとおり、本件問題票はその票数にかかわらずすべて有効票であるから、本件問題票が存在することは本件の解決にとって重要な立証事項ではないということである。

2 確かに、原判決判示のように、本件問題票が、検票して現物を確認調査するまでもなく、当然有効票と解釈されるべきものであるとするならば、検票の必要性は全くないという事になろう。

しかしながら、原判決の論理に従っても、本件問題票の中には、「投票者が補助参加人を推薦あるいは支持している政党の政党名を記載した」と推認されるような、他事記載に有意性のある無効と扱れるべき票と、「投票者が補助参加人の所属する政党名と誤認して記載した」と推認されるような(但し、右推認が不当なことは既に述べたとおりである)、他事記載ではあるが有意性のない、その意味で有効と扱われるべき票が存在する事になるのであるから、これらの問題票の中において、どれが無効票であり、どれが有効票なのかを区別判断しなければならないことになる。

しかるに、原判決は始めから予断を持って、本件問題票を一律にすべて有効と扱う意思であったから、本件問題票の中に性質の全く異なる、少なくとも有意性のあるものとないものの二種類に分類されるべき票が存在する事に気付かず、その為に、本件問題票について、有効票と無効票を区別判断する為に唯一の証拠方法とも言うべき、上告人の検証(検票)の申立を慢然却下したものである。

原審裁判所の検証申立の却下は、後述するように本件における実質上唯一の証拠の申立を却下したもので判例違反の違法があると言わざるを得ないが、それにも増して、最も必要な証拠調べを行っていないという意味で明らかな審理不尽と言わざるを得ない。

3 原審において、上告人は、那覇市、嘉手納町、城辺町、伊良部町、上野村の五開票区の上告人の無効票中に、有効票と算定すべき票が少なくとも三九四票存在していると主張し、右五開票区の無効票について、事実上の検票を行ったが、その結果、一〇四票ものおよそ考えれない程多数の有効とすべき票が発見された。沖縄全県五三開票区中のわずか五開票区の、そのまたわずかな無効票の中にさえ、検票をして見れば一〇四票もの有効票が存在していたのである。一〇四票というのは、右五開票区の他事記載を理由とする無効票数合計三三一票中の三一%を占めるのであり、右結果は、開票手続において、投票の有効の判定が如何に杜撰になされているかを如実に示している。

このように、本件選挙の開票手続における投票の効力の判定に極めて強い疑念が示され、事実上行われた開票区の、ほんのわずかの無効票の中にさえ、上告人の疑念を裏付ける判定を誤った票が多数存在するのであるから、参議院議員選挙の重要性、高度の公共性並びに公益性に鑑みるならば、原審裁判所としては、たとえ当事者の主張がなくても、自ら職権によって検証を行うなど訴訟資料の調査蒐集につとめ、投票の効力に関する疑念を払拭するように訴訟を進行せしめるべきところ、慢然「選挙会の認定した補助参加人と原告の有効得票数の差が三四一票であることは当事者間に争いがないから、仮に原告主張のとおり右一〇四票がすべて原告の有効投票であったとしても補助参加人が本件選挙の当選人であることに変わりはない。したがって、その余の点について検討するまでもなく、右有効投票の存否は補助参加人の当選の効力に影響を及ぼすものでないことは明らかである」との判断のもとに、検証等それ以上の証拠調べを行うことなく原判決をした。

4 確かに、原判決の論理の前提のとおり、これ以上上告人の有効票が発見される見込みが全くなく、かつ、本件問題票もすべて有効票として、それ以上補助参加人の無効票が出てくる見込みがないのであれば、検証(検票)をする事なく判決をする事に問題はなかろう。

しかしながら、本件選挙においては、たった五か所の開票区のわずかな無効票(その内他事記載を理由に無効とされた票は三三一票である)の中から一〇四票もの上告人の有効票が発見される程に、投票の効力の判定の杜撰さが明らかになっているのであるから、全部の票を検票すれば、更に多数の上告人の有効票が発見され、又、更に多数の補助参加人の無効票が発見される蓋然性は極めて高いと言わなければならない。

このように、被上告人の投票の効力の判定に問題があることが、具体的に一部の票の検票によって裏付けられている時に、上告人の検証の申立を却下した原審裁判所の訴訟手続には、明らかな審理不尽の違法があると言うべく、右審理不尽の結果として、原審裁判所は、本件問題票の効力の判定にあたって、「有意の他事記載」の解釈を誤ったと言わざるを得ない。

第三 原判決には、立証責任の配分に関し、法六八条一項五号の解釈を誤った違法があり、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、当然破棄されるべきである。

一 法第六八条一項において「参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙については次の投票は無効とする」と定め、同五号において「公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし職業・身分・住所又は敬称の類を記入したものは、その限りではない」と定めている。同条は、投票の形式的無効原因を列挙した規定である。右規定の文言をもとに同条の立証責任を考えるならば、他事記載の存在は上告人に主張立証責任があると考えられるが、その他事記載のある票が同一項五号但書の列挙事由に該当すること、又は該当しないけれども、有意性がないとして有効票と扱うことができることの、主張立証責任は、被上告人にあると解するのが妥当である。

二 これを本件について見るに、本件で上告人が主張する、候補者の氏名以外の記載である「社会」「社会党」「公明」「公明党」「共産」「共産党」等の記載が、法六八条一項五号の「他事」であることは明らかであり、争いのない事実というべきである。従って、本件においては、右記載が同条一項五号の但書中の「職業・身分の類」に該当するか否か、又、仮に「職業・身分の類」に該当しないとしても、これらの票を有効と扱うことができるかどうかが争点であるが、右の記載が他事であることが明白である以上、右政党名の記載が「職業・身分の類」の記載に該当するか、仮に然らずとしても、有意性がないといえるか、の主張立証責任は、右他事記載が無効とならない旨主張している被上告人にあると解すべきである。

三1 ところで、本件問題票については、検証を行っていないので、当該票自体からその有効・無効を判断する事はできない。即ち、その票の記載自体から、その有意性の有無の立証などなされていないのである。

もちろん、これら右所属外の政党名が「身分」に該当するか否かは身分の類という文言の解釈の問題であるから特に立証の必要はないけれども、若し右記載が「身分」に該当しないならば、被上告人は右記載が法六八条一項五号但書の列挙事由に該当しないにもかかわらずこれらの記載のある票が有効だということを立証しなければならないという事になる。

2 右記載が「身分」に該当しないことは既に詳しく述べたとおりである。従って、本件については、被上告人において、右記載が「身分」に該当しないけれども有効であることを立証しなければならないという事になるが、右記載事項について、有意性がない事を証明するに足る証拠は何もない。即ち、証拠としては、原判決が証拠として表示する丙第二、三号証や甲第一号証ないし二六の新聞記事程度であるが、これらの選挙協力協定文書や新聞記事の存在から、具体的な本件問題票の投票者が、如何なる意思で投票を行ったかを推認する事はおよそ不可能であろう。

即ち、右程度の証拠では、本件問題票は有意の他事記載か無意の他事記載なのか真偽不明と評価せざるを得ない。

しかるに、原判決が本件問題票を有効と扱ったのは、原判決が、投票された票を可能な限り有効に扱う解釈をしようとするあまりに、立証責任の分配を誤り、本件問題票の有意性について、真偽不明にもかかわらず(真偽不明なら立証責任の分配から考えて無効と判断すべきである)、有効票と判断したものと思われる。

3 法第六七条後段は「その決定に当たっては第六八条(無効投票)の規定に反しない限りにおいて、その投票した人の意思が明白であれば、その投票を有効とするようにしなければならない」と規定している。原判決は右規定を根拠に本件問題票について有効票との解釈をしたのではないかと忖度するものであるが、右規定の意義は、投票の効力決定に当たっては投票の秘密保持、選挙の公正確保に意を尽くしながら、投票用紙の記載自体、用いられた投票用紙等もっぱら形式的要素を基準として選挙人の意思を客観的に推測し、選挙人の選挙権行使の意図を尊重し、例えば、投票の記載が拙劣、不明確、不正確であっても、記載の類似性から候補者の一人に投票を帰属させることができるときは、当該候補者の有効投票とする等、できるだけ投票を有効としなければならないというのであって、その解釈にも当然限度があるし、右規定によって法第六八条の立証責任の配分が変更されるものでもない。本件問題票については、明らかな法六八条一項五号違反の問題であるから、同条違反にかかわらず有効票と扱うべきであるとの立証のない限り無効と解すべきである。

第四 原判決には、上告人が申立てた唯一の証拠方法を却下した判例違反(大審判明治三一年二月二四日民録四―二―四八、大審判明治三五年五月一五日民録八―五―六二)等重要な訴訟手続違反が存し、破棄を免れない。

一 原審裁判所は、第一回口頭弁論の時点から、本件問題票は有効との予断のもとに、法二一三条一項に定めるいわゆる「一〇〇日裁判」を根拠として、迅速審理の名の下に、上告人申立の重要な証拠申請を悉く却下したうえで、判決に至っているものであり、その訴訟手続は実質的審理が全く尽くされておらず、裁判の公正さそれ自体さえ疑わしめるものである。

二 原審裁判所は、上告人の原審における平成五年一月一三日付準備書面から明らかな通り、期日外である平成四年一二月七日に、上告人及び被上告人、補助参加人らを同席させて今後の訴訟の進行方針を確認した際に、裁判所の証拠調べの方針として、一方的に、「裁判所は上告人の平成四年一一月六日付準備書面第一項の請求原因の追加的変更部分、即ち無効票中に存在すると主張している「自民大シロ」又は「自民党大シロ」票についてのみ証拠調べをする」旨表明し、以後、判決に至るまでこの方針を堅持し、上告人の主たる請求に係る唯一の証拠調べ方法である補助参加人有効票中に存在する「共産党シマブクロ」「社会党シマブクロ」「公明党シマブクロ」等の他事記載票に関する検票手続き及び同票の存在に関連した証人申請等を悉く排斥した。右事実はほとんど何の証拠も出ていないこの段階で、原審裁判所が本件問題票を有効票と判断していたことを如実に示すものであり、この点から、原審裁判所が有効票との予断のもとに訴訟手続を進めていたことが明らかとなる。

三 ところで、原判決は、補助参加人の有効票中に存在する本件問題票の検票のための上告人の検証申立を却下する理由として、「本件問題票が無効票であることを前提とする原告の検証の申立てを採用すべきでなく、さらに、本件問題票が八〇〇票以上存在することは本件の解決にとって重要な立証事項ではないことになるので、この事実を立証するために申し立てた検証の申立てが唯一の証拠方法であったとしても、これを採用しなかったことが不適法であるとはいえない」旨判示している。

上告人は、原判決の「無効票ではない」という判示自体が法六八条一項五号の解釈を誤った不当なものであることを既に論証して来たが、少なくとも、原審裁判所が上告人にとっての唯一の事実審裁判所である以上、上告人主張の問題票が上告人主張の通りに存するか否か、また、これらの票が上告人の主張するように有意の他事記載なのかどうか、の認定の為の証拠調べは、原審裁判所の当然の義務であると思料する。

即ち、本件においは、明らかに他事記載のある本件問題票の有効性を判断するにあたって、証拠として調べられたのは新聞記事や選挙協力協定文書だけであり、原審裁判所の判決が実質的に依拠する証拠も又これらの証拠のみである。

上告人は、新聞や選挙協力協定文書の存在のみで、他事記載の投票をした投票者の、他事記載をするにあたっての何らかの特定の意思の存否を判断することなど不可能と思料するので、これらの他事記載の票を検票によって検証することにより、これらの問題票の有意性の有無を立証しようと考え、実質上本件の唯一の証拠方法である検証(検票)の申立をなした。

しかるに、原審裁判所は、本件検証申立(検票)が本件問題票の有意性ある事を証明するための実質上の唯一の証拠である事を承知のうえ、右申立を却下し、そのうえで、本件問題票につき、有意性ある他事記載であるとの上告人の主張を、ことごとく証明がないとしてしりぞけたのである。

四 唯一の証拠方法を却下する事が違法であるとの論拠は、「立証の途を杜絶して立証のなきを責めるのは違法である」ということであるが、原判決は、正しく上告人の立証の途をすべて杜絶してその立証なきを責めるもので、当然違法であると言わざるを得ない。

なお、唯一の証拠方法を却下することは違法であるとの判例理論の例外として、わずかに、相手方の証拠の信用できないことを立証するための証拠調の申出、裁判所が裁判をするのに必要な知識を有する場合の鑑定の申出、職権探知の行われる手続において、他の証拠により既に心証を得ている場合の反証の申出、等があるが、上告人の本件検証の申立が、右事由のいずれにも該当しない事は明らかであろう。

以上述べたとおり、原審裁判所が上告人の唯一の証拠方法である検証(検票)の申立を却下した事は、明らかに違法であり、当然破棄されるべきである。

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